Wei Nan, Sound of Waves Ⅴ, 26W×67D×14Hcm, Lacquer, Cowhide, Linen, 2024
Curation Note
このたび Alpha Contemporary は、『ディア ポエム:本川 芽衣、隗 楠、徐 梓淳』を実施する。
『詩』に現れる芸術的特徴は、視覚媒体のアートとの共通点が多く、また『詩』は、多くのアート制作者にインスピレーションを与えて来た。
『詩』は、定まった形式に縛られ、その圧縮された形式的な属性の故に、『メタファー』を多層的に駆使し、『行間』を読ませ、話者の『ナラティブ』を他者に共感させる。また詩の造形的な特徴である『リズム性』を持って、美的体験を与える。
美術も同様である。特に絵画においては、限られたサイズの平面という空間と時間が制限されている形式の縛りの中、様々な『メタ ファー』や美術史文脈の引用、変化され、変奏される『ナラティブ』を展開して来た。また反復と律動的な動きなど独自の造形的な表現を通して美的体験を与える。
本展示は、現代アートを『詩』という他芸術形式から再発見し、解釈する展示である。芸術ジャンル間の相関関係を改めて確認するきっかけとなる他、幼い頃から親しんで来た『詩』から現代アートを解釈することで、より現代アートに親しんでいただく。
まず、『詩』の『ナラティブ性』は、視覚媒体である美術の中でも現れる。それは、アーティスト本人または違うペルソナを通して画面上に展開される。このナラティブ性は、空間と時間において限られた2次元の画面の中で、まるで演劇舞台のように多彩に変奏された画面に表現される。
本展からは、私的経験と心象風景を色鉛筆で無数の線で表現する本川 芽衣(Japanese b.2002) の作品から体験できる。 このナラティブ性では、自身の心境と他者の心境が折り合って行く『共感』を導く。本川のナラティブが画面を通して鑑賞者の心境とどう折り合って行くのかを体験できる。また、一つの画面上で、変奏されて行く話者の心象風景を経験できる。
次に『詩』の造形的特徴である『リズム性』においては、皮革素材を用いた漆造形作品に取り組んで来た隗 楠(ウェイナン)(Chinese b.1994) を通して体験できる。 隗は、皮革素材の持つ伸縮性や可変性を用いて『リズム性』のある独自な造形表現を行う。動物の皮革素材のテクスチャーが持つ強い生命力と漆の輝きを最大限に引き出し、自然の美しさと力強さを自身の『ナラティブ』を持って律動的に表す。この『ナラティブ』は、作品の造形的な表現の中の『行間』を通して読むことができる。華麗でありながら力強く、律動感溢れる隗の作品から詩的要素を感想いただきたい。
最後に、『詩』は、圧縮された表現の中で多層的な意味を『メタファー』を通して表現する。
中国大陸の腹地に位置する山々に囲まれた雲南省の出身の徐 梓淳(シュ ジチョン)(Chinese b. 1997) は、生まれ育った雲南省での山々の風景を描く。音楽と記憶よりインスピレーションを得て制作を行う徐は、音階の流れから時間の流れをくみ取る。徐の作品では、高低を繰り返した上、「♮」(ナチュラル)に調整して行く音階のように、物質は様々な抑揚を経て中立へと調整されて行くことを雲南省の山々と水平線を『メタファー』に表現される。これは、起承転結を持って展開される『詩』の形式的要素を思わせる。
本展を通して、現代アート作品を『詩』という芸術ジャンルから鑑賞することで、視覚芸術である美術の多角的な造形言語の可能性を認識いただきたい。
本川 芽衣は、多摩美術大学現役大学4年生である。(2024 年10 月現在)、高校在学中の 2020 年「本川 芽衣 展」(mametraartspace東京)を行った。第 9 回環境ポスターコンクール 環境大臣賞受賞(2017)、第 20 回高校生国際美術展 優秀賞 受賞(2019)、アール・エスポワール展 日本ユニセフ協会賞 受賞 (2019)、第 30 回中央展 東京都教育委員会賞(金賞)受賞 (2019)、第 42 回東京都高等学校文化祭 美術工芸部門 受賞 (2020)、第 21 回高校生国際美術展 佳作 受賞 (2020)、 FACE 2024入選 (2024)、第 42 回上野の森美術館大賞展入選 (2024)など多数の受賞歴を持つ。
隗 楠は 1994 年中国生まれ、京都府在住。2016 年北京工業大学芸術デザイン学部装飾芸術デザインコース卒業。2024 年京都市立芸術大学大学院美術研究科漆工領域博士後期課程修了。主な受賞歴は韓国清洲国際工芸コンペティション特別賞 受賞 (2021)、第 21 回学生限定立体アートコンペティション AAC2021 最優秀賞 受賞 (2021)、第 33 回工芸美術日工会展 日工会賞 受賞 (2024)、個展に「隗楠漆展― EXPLORING ―」蔦屋書店、京都、2024)、「隗楠漆展 ― Blooming Lacquer ―」(祇をん小西、京都、2023)、「隗楠展 -漆・美の在り方-」(ギャラリーマロニエ、京都、2021)、グループ展に「 工芸アートフェア金沢 2022 」 ハイアットセントリック (金沢、2022、同‘23)、「Kyoto Art for Tomorrow 2024‐京都府新鋭選抜展-」(京都文化博物館、2024)など。イギリス V&A 博物館に作品所蔵されている。
徐 梓淳は、中国雲南省生まれ、神奈川県在住。2015 年広西芸術学院に入学し、2019 年広西芸術学院美術研究科油画専攻第一研究室を卒業。2023 年多摩美術大学大学院美術研究科油画専攻に卒業。東京芸術劇場 kenzan 2022 に入選 (2022)、神奈川県美術展に入選 (2023)、東京芸術劇場 kenzan 2023 に再び入選 (2023)、FACE 2024 入選 (2024)。PANTA RHEI (MJK GALLERY, 2024)、迷込展(anotherprojecttokyo, 2024)、SUPERCROWDS/ SUPERCOMMUNITY (TANK Shanghai 2024) のグループ展に参加した。
■展示概要
□会期|2024 年 10 月 12 日(土)~ 11 月 2 日(土)
□時間|水曜―土曜 12 時―18 時 (日、月、祝日:休廊) ※火曜:前日 18 時までにメールでの事前予約制
□住所|〒108-0073 東京都港区三田2-13-9 三田東門ビル8F
□入場|無料
□お問い合わせ|infoalphacontemporary@gmail.com
■レセプション及びアーティストトーク
□日時 l 10 月 12 日、16-18時
□言語 l 日本語
□どなたでもご参加いただけます。
■Alpha Contemporary(アルファ コンテンポラリー)
Alpha Contemporaryは、同時代性に関しての独自な視点を持って、国内外のアーティストを日本と世界に向けて紹介する。また、作品のみならず、作品の製作プロセスやコンセプト、アーティストからのメッセージをグロバールアートシーンへ共有する。
Works
Mei Motokawa, 遼, Colored Pencil and Oil on Canvas, 116.7 × 91 cm, 2024
Wei Nan, Sound of Waves Ⅴ, 26W×67D×14Hcm, Lacquer, Cowhide, Linen, 2024
Xu Zichun, ♮ No.15, Oil on Panel, 22x 33.3cm, 2024