Curation Note
本展は、ヴァージニア・ウルフの『自分だけの部屋(A Room of One’s Own)』 に着想を得た企画展の第二弾(Vol.2)となる。Vol.1「A Room of Her Own: ア ジア女性、東京センシビリティ― ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』 から」(2025年7月)では、東京を中心に活動する女性作家の視点と“部屋”というテーマを深く掘り下げた。
本展Vol.2では、「森」という共通のモチーフを起点に、二人の女性アーティストがそれぞれの“窓”から異なる世界を探る。森とは、光が屈折し、生態が重なり、目に見えない営みがひそやかに巡る場所である。ひとつの対象であっても、視点の距離や立つ位置によって全く異なる表情を見せる内密な世界だ。
ナカバヤシアリサ(Japanese b.1992)は、植物や人物のモチーフを通じて現代日本社会を独自の視点から描き出す。今回は、森を全景(ランドスケープ)として広い視野でとらえる。彼女の絵画には、土地が纏う光の質、湿度、温度、空気の厚みが繊細に混ざり合い、具象と抽象の境界を曖昧にするドラマティックな画面が立ち上がる。素早いストロークや滲みの表情を駆使し、森が日々変化しながら呼吸するようなリズムを映し取ることで、遠景の広がりの中に潜む微細な揺らぎや気配が浮かび上がる。また、彼女の作品には、部分的な視点と全体を俯瞰する視点が静かに共存しており、風景の内側から世界を見つめる“語り手”の感覚と、その風景を外側から眺める距離感が同時に立ち上がる。この二つの視点が重なり合うことで、森という空間は、多層的な心理的風景へと変換される。
ナム チョイ(Korean b.1978)は、森を近景から中景へと滑らかに揺れ動く視線で捉え、自然が肌の近くで発する緊張と原初的な生命力を、大胆な色彩と重層的な表面で描き出す。
彼女の作品には、植物が持つ——生き延びるための戦略、保護色、外敵に対する即応性、環境に合わせ形態を変えるしたたかさ——が強く息づいている。鮮やかな原色のレイヤーと厚みを帯びた質感は、森の中で絶え間なく繰り返される“生存のやりとり”を可視化し、観る者の身体感覚に直接触れてくるような強度を生む。 その世界は、近くに寄らなければ見えない揺らぎと、張力が共存する、生々しい心理的ランドスケープである。
二人の表現の差異は、鑑賞者に多層的な読み解きを促し、森という普遍的な自然がいかに個人的で内面的な体験へと変容しうるかを鮮やかに示している。
本展タイトルは、ヴァージニア・ウルフが女性の自由な視点と創造力のために説いた「自分だけの部屋」から着想を得ている。二人の女性アーティストが、それぞれの“窓”から森を見つめるその姿は、ウルフの思想を現代へと引き寄せ、対象への繊細で豊かな対話を浮かび上がらせる。
来場者の皆様には、二つの窓から交差する森の景色を通じて、女性たちの多様な視点と感性の広がりを立体的に体験し、女性表現がもつ豊穣さと創造の可能性を改めて感じていただく機会となることを願っている。
■展示概要
・期間|2026 年 3 月 12 日 - 3 月 15 日
・会場|東京国際フォーラム、ホールE/ロビーギャラリー
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
JR・地下鉄有楽町駅 徒歩約1分、JR東京駅(京葉線) 徒歩約5分
・スケジュール l
<VIP>
VIP (First Choice) 3 ⽉ 12 ⽇ (⽊) 11:00 - 19:00
VIP 3 ⽉ 12 ⽇ (⽊) 13:00 - 19:00
<一般>
-3 ⽉ 13 ⽇ (⾦) 11:00 - 19:00 ( 最終入場は 18:30 まで )
-3 ⽉ 14 ⽇ (⼟) 11:00 - 19:00 ( 最終入場は 18:30 まで )
-3 ⽉15 ⽇ (⽇) 11:00 - 17:00 ( 最終入場は 16:30 まで )
・Inquiry|infoalphacontemporary@gmail.com
