Curation Note
このたび Alpha Contemporary は、『リアリティ:ピアーズ ・トビアス・アルソップ & 大河原 愛』を2024年2月9日より3月9日まで実施する。
今回の展示では、人生の「リアリティ」という大きなパズルの中から、独自のインサイトを持って「リアリティ」の破片を視覚言語化している日本とイギリスの同世代アーティスト二人を紹介する。
ピアーズ ・トビアス・ アルソップ(London, UK b. 1984)は、キャンバスを加工の「セット」としてい、その中で人間と現実との断続的な関係、「リアリティ」を考察する。
人間が集団的な良心などによって過ちを行ってしまうナイブさ、弱さや愚かさなどをユーモアと皮肉を込めて、中世時代などの過去と現在のシンボルを使って作品化する。
ピアーズの画面の中では、しばしば匿名の人物が抽象の境界上で登場している。 周囲から孤立した彼らは、見る者を表に出ていないピアーズが設定した一つのリアリティである挿絵の一場面に誘う。
ピアーズの作品は、時には小道具のファサードを彷彿させながら、私たちの集団的良心による危うさなど人生のリアリティについて考えさせられる。
ピアーズは現在、ロンドンを拠点に活動している。2007 年に UAL: Camberwell College of Arts で絵画の学士号を取得し、2023年には Newcastle University の客員講師として招待された。
今回の展示では、ピアーズの父であるイギリスを代表する建築家であり、画家でもあったウィル・アルソップ(Will Alsop 1947-2018)の関連のものも展示する。ピアーズとの貴重な2ショットやアトリエでの写真などの写真や建築図録なども展示期間中に紹介している。
大河原 愛(日本、b.1979)は、事柄の表裏や、人の心の光と闇など、人生で直面する物事の両面性を視覚化する。
光だけではない、ありのままの人間の内面、事柄の「リアリティ」を写実的な技法で描きながら、心理的な画面構成を行う。
正確で精妙に人体や対象の描写を行いながら、人体の一部や背景のデフォルメを行い、抽象の境界線上で表現している。
浮かび上がる美しく繊細な骨格、閉じたままの目、デフォルメされた身体など、どこか完成されていない不完全な人間の欠落を描きながら、その不完全さの中にある美しさとにじみでる光が、観る者を画面に引き込む。大河原の繊細でありながら大胆な筆致、モノトーンの上にほどこされた鮮やかな色彩の対比が、暗闇と光、裏と表の人生の「リアリティ」の欠片を思い起こさせる。
大河原愛は、2004年 武蔵野美術大学大学院修了。2008 - 2010年にかけてニューヨークに滞在。新宿高島屋で個展を6回開催。その他、銀座、大阪高島屋、名古屋松坂屋など個展歴多数。海外では、2011年にアメリカ、ポートランドのHellion Gallery でも個展を開催した。東京、台湾、北京、上海、マレーシア、シンガポール、NY など海外や国内の多数のアートフェアにも出品している。
日本のみならず、ヨーロッパ・ロシア・アメリカの海外コレクターにも多数の作品を所蔵いただいている。著名作家桐野夏生や、 芥川賞作家の書籍など複数の本の装丁画として起用され、Netflixドラマ「全裸監督」の劇中作品や、日本アカデミー賞受賞映画「ミッドナイトスワン」にも大河原愛作品が起用された。2020年にはBSフジテレビ「ブレイク前夜」でも紹介され、近年は子宮筋腫治療法を紹介するCMにも出演するなど、活躍の幅を広げている。
また、展示開始日に行われるアーティストトークやオープニングレセプションでは、招徳酒造株式会社様より日本酒「ショートク」をご協賛いただく。
日本初の紹介となるピアーズと大河原 愛の二人展で、二人が提示する「リアリティ」をぜひご高覧いただきたい。
■展示概要
□会期|2024年2月9日(金)~3月9日(土)
□時間|12:00~18:00 ※休廊:日、月、祝日
□会場|Alpha Contemporary
□入場|無料
□お問い合わせ|infoalphacontemporary@gmail.com
■関連イベント
アーティストトーク(ピアーズ ・トビアス・ アルソップ & 大河原 愛)& レセプション
□日時|2024年2月9日(金)18:00~20:00
※どなたでもご参加いただけます。
※展示の観覧は12時から可能です。
□スポンサー:招徳酒造「ショートク」
■Alpha Contemporary(アルファ コンテンポラリー)
Alpha Contemporaryは、同時代性に関しての独自な視点を持って、国内外のアーティストを日本と世界に向けて紹介いたします。また、作品のみならず、作品の製作プロセスやコンセプト、アーティストからのメッセージをグロバールアートシーンへ共有いたします。
□住所|〒108-0073 東京都港区三田2-13-9 三田東門ビル8F
□営業時間|火曜―土曜 12時―18時 (日、月、祝日:休廊)
□ホームページ| https://www.alpha-contemporary.com/ja
□Instagram|https://www.instagram.com/alpha_contemporary/
■Will Alsop(ウィル・アルソップ, 1947-2018)
今回展示に参加するピアーズ ・トビアス・ アルソップの父。多くの著名クリエイターを送り出し、バンクシーが名誉教授として就任していることでも有名なイギリス UCA 芸術大学で教授を務めるなど、多くの教育機関でのポストを務めた。
ウィルが残した数々の建築は、型破りなアバンギャルドフォルムで、建築界では珍しい明るい色を用いるのが特徴で、世間で度々論争を巻き起こした。2000 年には、ウィルがデザイナーを務めたロンドン・ペッカム図書館が、英国で最も名誉のある建築賞、スターリング賞 (王立英国建築協会) を授与された。
同じ2000年に、功績を残した文化人等に贈られる大英帝国勲章を授与された。また、古い歴史を持つロイヤルアカデミーオブアーツ (王立芸術院) は80名の選挙で選ばれたメンバーによって運営されているが、そのひとりとして選ばれ、ロイヤルアカデミアンを努めた。
建築家としてのウィルは、ノーフォーク地方のプール、カーディフのビジターセンター、ドイツ北部ハンブルクのフェリーターミナルなど、多くのプロジェクトに携わった。そして 1992 年、南フランス、マルセイユの郡庁舎建築のコンペティションで1位を勝ち取り、今ではマルセイユのランドマークにもなっている通称 “Le Gran Bleu” は、20 世紀建築の代表作として挙げられている。また、「第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」の英国館での出展を含む、多数のビエンナーレに出展した。
ウィルは絵を描くことでマインドをクリアにし、何にもとらわれないデザインにアプローチするという、現代建築家でもあり、アーティストでもある。ウィルの多くのアート作品も建築と並び、ロンドンで最も小さな国立美術館であるサー・ジョン・ソーンズ美術館をはじめとする場所で展示され、アーティストとしても旺盛な活動をした。
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