Curation Note
このたび Alpha Contemporary は、『Yohta Matsuoka : Fake Plastic Apples 』を 2025 年 4 月 25 日 より 5 月 14 日まで実施いたします。
本展は、ルネサンスの終わり頃から美術史の中に登場した「静物画」のフォーマットを用いて、今日の社会を生きる Yohta Mastuokaの独自な視点で手掛けられた「静物画」を紹介します。
人物を排除し、自然的な環境とは離れたところにある動かないもので描かれる「静物画」。
Yohta Matsuoka は、その静物画の中で、バナナやリンゴなど西洋美術史や現代アートにおいてのアイコニックなモチーフを画面に散りばめながら、ものを宙に浮かせたり、本物とフェイクを共存させたりなど、人間の知覚や認知に揺らぎを与える画面を描きます。
ドラマチックな構成、鮮やかな色彩、どこかシニカルで、遊び心あふれる Yohta Matsuoka の作品は、観る者の様々な感覚を呼び起こしてくれます。
展示タイトル「Fake Plastic Apples」から読み取れるように、 Yohta Matuoka の “仕掛け”のある「静物画」をぜひ近くでご覧ください。
■アーティスト ステイトメント
本展は、静物画という伝統的なフォーマットを出発点としながら、視覚的認識の揺らぎと物質の意味生成の過程を問い直す試みです。
花瓶は単なる容器ではなく、顔の一部としても知覚され、その物への認識が実は流動的であるよう促し、あるいは意図的に宙に浮くりんごを描くことで、「静物」の時間軸を解き放ちます。
「投げられたのか、それとも落下しているのか」
こうした視覚の撹乱は、現代社会における情報の即時的な消費や意味の固定化に対するカウンターとしても機能し、AIによる画像生成やフェイクニュースが氾濫する時代において、不確かな情報に対して疑問を呈します。
私たちの目の前にあるものは本当に「実在」しているのか?
そしてあなたがみているりんごは本当にりんごなのだろうか?と。
静物画の静けさの中に潜む運動。
固定されたイメージの裂け目から立ち上がる新たな意味と解釈。
その瞬間、私たちの知覚は、再び開かれるような気がするのです。
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Yohta Matsuoka (Japanese b.1978)
群馬県高崎市出身。多摩美術大学卒業。2004年より日本のストリートカルチャーシーンの中で「JONJON GREEN」名義でライブペイントを主として制作活動を始める。80年代のイタリアを中心に生まれた色鮮やかで刺激的なデザイン集団「メンフィス」に大きな影響を受けたことから、パターンで構成するダイナミックかつ自由度の高い抽象表現を壁画に応用し国内外に数々の大型作品を残す。2021年より、原初的な感覚でモノクロの画面に球体や棒などのシンプルなオブジェクトを配置する静物画の作品制作を開始。本名である「松岡洋太」名義にて個展『Before Dawn(夜明け前)/ SORTone, Tokyo, 2022』を開催し国内外から注目を集め、イギリスで個展『Before Dawn / MOOSEY, Norwich, 2023』を開催した。オブジェクト同士の偶発的な関係性によって得られるシミュラクラ現象を通して、物体が持つ本来の姿とは違うユーモアを創造することを考察している。
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■展示概要
□会期|2025 年 4 月 25 日(金)~ 5 月 14 日(水)
□時間|水曜―土曜 12 時―18 時 (日、月、祝日:休廊) ※火曜:前日 18 時までにメールでの事前予約制
□住所|〒108-0073 東京都港区三田2-13-9 三田東門ビル8F
□入場|無料
□お問い合わせ|infoalphacontemporary@gmail.com
■アーティストトーク
□日程|2025 年 5 月 9 日(金)19 ~ 20時
□予約制→
■Alpha Contemporary(アルファ コンテンポラリー)
Alpha Contemporaryは、同時代性に関しての独自な視点を持って、国内外のアーティストを日本と世界に向けて紹介します。また、作品のみならず、作品の製作プロセスやコンセプト、アーティストからのメッセージをグロバールアートシーンへ共有します。
Works
Interview
Interview
Yohta Matsuoka
by HIDDEN CHAMPION
色鮮やかで巨大な壁に描かれた抽象的な作風から一転、キャンバスという枠の中で自分の表現を模索し始めた松岡洋太。
現在はオブジェクトを配置する“静物画”に焦点を絞り、新しいもの見え方の可能性を追求している。
今回は、2022年にHIDDEN CHAMPIONが主催した個展「Before Dawn」を踏まえ、2025年4月後半からALPHA CONTEMPORARYで開催される個展に向け作風や心情の変化について話をうかがった。More >