Installation/ Reception Views
Artworks
Yohta Matsuoka
Japanese b.1978
■アーティスト ステイトメント
本展は、静物画という伝統的なフォーマットを出発点としながら、視覚的認識の揺らぎと物質の意味生成の過程を問い直す試みです。
花瓶は単なる容器ではなく、顔の一部としても知覚され、その物への認識が実は流動的であるよう促し、あるいは意図的に宙に浮くりんごを描くことで、「静物」の時間軸を解き放ちます。
「投げられたのか、それとも落下しているのか」
こうした視覚の撹乱は、現代社会における情報の即時的な消費や意味の固定化に対するカウンターとしても機能し、AIによる画像生成やフェイクニュースが氾濫する時代において、不確かな情報に対して疑問を呈します。
私たちの目の前にあるものは本当に「実在」しているのか?
そしてあなたがみているりんごは本当にりんごなのだろうか?と。
静物画の静けさの中に潜む運動。
固定されたイメージの裂け目から立ち上がる新たな意味と解釈。
その瞬間、私たちの知覚は、再び開かれるような気がするのです。
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Yohta Matsuoka (Japanese b.1978)
群馬県高崎市出身。多摩美術大学卒業。2004年より日本のストリートカルチャーシーンの中で「JONJON GREEN」名義でライブペイントを主として制作活動を始める。80年代のイタリアを中心に生まれた色鮮やかで刺激的なデザイン集団「メンフィス」に大きな影響を受けたことから、パターンで構成するダイナミックかつ自由度の高い抽象表現を壁画に応用し国内外に数々の大型作品を残す。2021年より、原初的な感覚でモノクロの画面に球体や棒などのシンプルなオブジェクトを配置する静物画の作品制作を開始。本名である「松岡洋太」名義にて個展『Before Dawn(夜明け前)/ SORTone, Tokyo, 2022』を開催し国内外から注目を集め、イギリスで個展『Before Dawn / MOOSEY, Norwich, 2023』を開催した。オブジェクト同士の偶発的な関係性によって得られるシミュラクラ現象を通して、物体が持つ本来の姿とは違うユーモアを創造することを考察している。